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整理解雇における留意点

【記事】 シンガポール「整理解雇における注意点」

シンガポールでは新型コロナウイルス禍からの景気回復に伴い、転職市場も成長分野での人材需要の高まりからマーケットの求人数は回復してきております。

ただ一方で、昨今のコロナウイルスの影響により、当然ながら、徐々に持ちこたえられなくなる企業も増えており、整理解雇される従業員も増えてきております。失業率の増加を何としても防ぎたいシンガポール政府当局は、これまでに様々な対応を行っており、昨年はアップデートされた整理解雇のガイドラインがありましたが、この度、人材開発省(MOM)より更なる改訂が発表されました。

MOMへの通知義務

シンガポールではRetrenchmentと呼ばれる整理解雇ですが、法律で規定されている定義としては、「雇用主が組織の運営上および再編成等において余剰人員を理由とする従業員の雇用を解除すること」とされています。これには、企業が清算、管財、司法管理を受ける場合も含まれます。また、すぐに欠員を補充する計画がないまま雇用契約を終了する場合も、従業員を整理解雇したと推定されます。対象者は正社員だけでなく、6ヶ月以上の契約期間を持つ契約社員にも適用され、シンガポール人、PR、外国人など、すべての従業員が含まれます。

今回のガイドライン改訂により、2021年11月1日以降は、10人以上の従業員を抱える雇用主が整理解雇を行う際には、影響を受ける従業員の数にかかわらず、MOMに通知することが義務付けられます(現在は6ヶ月間に5人以上の従業員解雇の場合に通知義務あり)。この通知対象には懲戒解雇やパフォーマンスが低いことなどによる解雇は含まれません。対象の従業員へ解雇の通知をしてから、5営業日以内にMOMへ報告する義務がありますので、注意が必要です。

雇用法改訂による変化

従来、シンガポールの雇用法は、日本と比較して雇用側に有利になっていると言われており、従業員の解雇についても比較的に容易にできておりました。これは、シンガポールが国策として外資の誘致を積極的にしてきた歴史があり、そのため雇用側に、より有利な雇用法が設定されてきたと考えられております。

しかしながら昨今の度重なる雇用法の改訂により、雇用法の適用対象者の拡大や今回のような報告義務の厳格化など、シンガポールの労務環境も徐々に雇用側ではなく、従業員を保護する方向に舵を切り始めたことが分かります。

これにより、雇用主も解雇の際には法律に基づいた事前通知や解雇手当の支給についての知識を持っておくことが必要となり、どのタイミングでどのように実行すべきか、他に気をつけるべきことはないか等、シンガポール国内の事情を鑑みて判断すべき要素も多く出てきます。また公労使三者機関でもあるNWCのガイドラインなどで、「解雇は他の実行可能な選択肢を検討し、手を尽くしたうえでの、最後の手段であるべきだ」とされています。

解雇を決断する前に従業員の勤務体制を見直し、例えば時間短縮勤務への変更や、技能不足のスタッフの再教育、職場の変更などの再調整を行ったうえで最終手段として行わなければなりません。当然ながら、マタニティー休暇期間中の職員の解雇や年齢、性別、人種などの差別的な理由による解雇は禁止されています。

弊社でも解雇に関する様々なご相談やご質問をいただいておりますが、特にこのコロナ禍では事業縮小によるものだけでなく、在宅勤務で見えづらい、従業員の勤務態度等に基づく解雇の検討など、コミュニケーションを取りづらい中でのマネジメントや評価制度についてのお悩みが多く寄せられています。

コミュニケーション・記録が重要

解雇を検討する前に、雇用側ができる事としては、コロナ禍での企業としての方向性をしっかり提示し、その方向性に即した具体的な指示出しやゴール設定、期待値調整、評価制度の見直しをするとともに、定期的なコミュニケーションポイントを努めて作っていくことが推奨されます。

また事業の存続のために、やむなく解雇に踏み切らなければならない場合でも、雇用主と従業員側で十分なコミュニケーションを行い、できるだけお互いが納得した形での解雇となることを会社の事情をつまびらかにして納得を求めることが重要です。これらの様々なやりとりは口頭ではなくできるだけ書面でも記録を残しておくことが大切です。

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